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姿勢が変わると人生が変わる?――新潟県五泉市の歯科が仕掛ける体操教室

2025年1月27日

姿勢が変わると人生が変わる?――新潟県五泉市の歯科が仕掛ける体操教室

五泉市の風景を変えた“オレンジ色の看板”


新潟県五泉市の街を車で走っていると、どこか目を引く鮮やかなオレンジ色の看板に出会えるだろう。信号待ちでふと見上げると、「SHISEIアカデミー」と大きく書かれており、その下には「お口と姿勢の体操教室」「五泉駅 徒歩3分」「無料体験会 実施中!!」などの文字が踊っている。

電線や街路樹の向こう側に、ひょっこり顔を覗かせるように設置されているこの看板は、浅井歯科医院が手がける“お口と姿勢の体操教室”を紹介するためのもの。シンプルかつ元気なデザインで、まさに地域住民の視線をキャッチするように配置されている。

看板の配色はオレンジやピンクを基調としたビビッドなトーンで、「子どもが思わず笑顔になる」ような楽しげな雰囲気を醸し出している。駅前の道路や道の駅、高速道路IC近くの交差点など、人の流れや車の往来が多い場所に3本設置されている。五泉市民であればどこかで一度は目にしているかもしれない。設置から2ヶ月も経たないうちに新規の問い合わせがあり、既存の患者さんからも「これって新しい取り組みなの?」という声がすでに上がっている。


歯科医院がなぜ“姿勢”を教えるのか?――意外な“お口”の力

姿勢が変わると人生が変わる?――新潟県五泉市の歯科が仕掛ける体操教室


浅井歯科医院は、五泉市という地域に密着しながら、患者の歯の健康を守るだけでなく、姿勢や体のバランスにも着目している希少な歯科医院である。

「歯と姿勢? そんなに関係あるの?」と思われる方も多いだろうが、実は“噛み合わせ”が骨格や首、肩、背中の状態、ひいては全身の姿勢に影響を与えることは意外に知られていない。子どもが小さな頃から正しい噛み合わせや歯列を意識しておくことで、将来的に無理な負担をかけず、健康的に成長できるのだ。

そこで同院では「お口と姿勢の体操教室」という、まるで児童体育のようなユニークなプログラムを実施している。対象はおよそ10歳までの子どもたちで、歯科医師やスタッフが「お口や舌の動き」と「姿勢改善の体操」を融合させた内容を指導するのだ。このコンセプトを一言で伝えるのは意外と難しく、「歯科=治療だけ」という先入観を持った親御さんにはピンとこないかもしれない。そこで、野立て看板の出番というわけである。


野立て看板が放つ“集客効果”と“広告効果”

姿勢が変わると人生が変わる?――新潟県五泉市の歯科が仕掛ける体操教室


近年、広告媒体といえばSNSや検索エンジンのリスティング広告など、“デジタル”のイメージが先行しがちだ。確かにインターネット上での集客は魅力的だが、地域ビジネスにおいてはアナログな野立て看板が驚くほど効果的なことも多い。特に五泉市のように、市役所や病院、道の駅といった生活上の要所が明確なエリアでは、そこに大きな看板を置くだけで地域住民の目に確実に触れられるのが強みだ。

浅井歯科医院では3本の看板を設置し、それぞれ設置場所に明確な狙いを持たせている。まず、市役所と中央病院の前という“まさに五泉市民が通りやすい場所”に大型看板を設置。13m以上のインパクトあるサイズ感が通る人々の目を一挙に引きつける。次に、子どもがよく遊ぶ道の駅の駐車場出口正面に看板を配置。「あ、ここにこんな体操教室があるんだ!」とレジャー帰りの家族連れが気づいてくれる絶好のポイントである。最後に、高速道路IC付近と国道が交わる要所にも掲出し、車で移動する層にも認知を広げている。

実際、「無料体験会 実施中!!」という文字を見て、家族が「ちょっと面白そうね」と興味を持つケースが出始めたという。目立つ看板だからこそ「こんなサービスやってるんだ?」という素朴な疑問が生まれ、それが受診や問い合わせにつながる。ネットの情報は膨大だが、一方で“見つけてもらう”のに手間とコストがかかる。その点、看板はリアルな空間での存在感が絶大なのだ。


デザインの力:色・文字・イラストが生むストーリー

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今回の看板のデザインを見ても、オレンジや黄色など温かい色合いがベースになっていて、メインメッセージである「SHISEIアカデミー」という文字が大きく配置されている。さらに「お口と姿勢の体操教室」という説明が添えられていることで、初めて見る人でも「あ、これは子ども向けの姿勢改善プログラムなんだな」と直感的に理解できる。

また、「五泉駅 徒歩3分」「無料体験会 実施中!!」など、利用者が最も知りたいであろう情報もしっかりと書き込まれている。看板は一般に、通りすがりの人が1〜2秒で情報を読み取るメディアだ。だからこそ、短いコピーで核心を伝えなければならない。文字数を絞り込んで、大きくわかりやすく描くことでインパクトが生まれる。まさに今回の看板はその好例といえるだろう。


“地域密着”と“小児歯科”が組み合わさる意味

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浅井歯科医院の特徴は、歯科医院としての強みだけでなく「小児予防矯正」や「キッズスペース完備」「保育士在籍」といった、“子ども連れの親御さんが利用しやすい環境づくり”に力を入れている点だ。院長が掲げる「歯の健康を継続的にサポートしたい」という理念と、子どもたちが安心して通える空間を作りたいという願いが、今回の体操教室にも結実している。歯並びと姿勢の関連性を伝えることで、保護者の悩みにトータルに応えようとしているのだ。

さらに地元・五泉市ならではの景観や人口動態も踏まえた看板設置は、単なる宣伝を超えて“コミュニケーションの仕掛け”にもなる。看板を見かけた地元の人が話題にすることで、「実は姿勢が悪くて気になってたんだよね」と盛り上がり、そのまま「こんな教室があるみたいだよ」と口コミが広がる余地がある。地域住民同士の情報交換に自然に溶け込んでいけるのは、まさに野立て看板ならではの強みだ。


コストパフォーマンスと“話題性”を両立させる看板戦略

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小規模事業や医院経営において、広告予算はどうしても限られがちだ。そこで重視されるのが「費用対効果」である。野立て看板は、一度設置すれば月々の維持費は比較的抑えられ、長期間にわたって地域での認知を継続的に高めてくれる。デジタル広告と違って、広告枠を更新するたびに多額の費用がかかるわけでもない。実店舗やリアルでのサービスを提供するなら、「そこに看板がある」というだけで、地域住民へ毎日アピールし続けることができるのだ。

今回、浅井歯科医院では看板設置から2ヶ月で新規問い合わせが1件あったという。数字だけを見れば「1件だけ?」と思う人もいるかもしれないが、医療機関での1件の問い合わせは、そのまま長期的な患者との関係へつながる可能性が高い。また、それ以外にも「今度子どもを通わせたい」「無料体験に行ってみようかな」という“水面下の興味”がゆっくり醸成されていると考えられる。いきなり大々的に予約が殺到するよりも、じわじわと認知が拡大し、長く地域に根づく方が歯科医院にとっては理想的だろう。


街の看板が子どもたちの未来を照らす

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歯科医院が“お口と姿勢の体操教室”を始める――一見すると意外な組み合わせに思えるが、その裏には「噛み合わせの良し悪しが姿勢に影響する」「子どもが正しい姿勢を身につけることは将来の健康につながる」という深い考察がある。従来の「歯が痛くなったら通う場所」というイメージを超えて、地域の子どもたちが健康に育つためのプログラムを提供し、それを大々的にアピールできるのが野立て看板の魅力だ。

オレンジとピンクを中心とした看板の写真を見るだけでも、すくすく育つ子どもたちの姿が想像できるし、色合いから“活気”や“楽しさ”が伝わってくる。これほどわかりやすくサービスを打ち出せば、興味を持った保護者が次々と足を運び、やがて五泉市全体で「姿勢がいい子どもが増えてきたね」と言われる日が来るかもしれない。小さな地域であっても、看板の存在感とその先にあるアイデア次第で、大きなムーブメントを生み出す可能性があるのだ。 たとえ歯科医院でなくとも、「一見してわかりづらい業態をどう広めるか」と悩む小規模事業者は少なくないはずだ。そんなときこそ、今回の浅井歯科医院の例を参考にしてみてほしい。ターゲットとなる人々がよく通る場所に、シンプルかつ魅力的な看板を掲げる。キャッチコピーは短く、ひと目でサービスの骨子がわかるようにする。そこに少しの“ワクワク”や“意外性”を混ぜておけば、多くの通行人が足を止め、頭に残してくれる。そうして始まった小さな興味が、やがて大きな信頼へと育つのだ。