コラム
Column
地域に根ざしたベーカリー「パン以上、ケーキ未満。」の野立て看板戦略とは?
2024年11月21日
神奈川県相模原市古淵にあるベーカリーショップ「パン以上、ケーキ未満」。無添加・無加調、保存料ゼロにこだわったパン作りで人気のこのパン屋は、オープン当初から「行列のできるパン屋」として、地域住民にとって「人気のパン屋」へと成長している。その成功の背景には、視認性に優れた野立て看板の力がある。
野立て看板とパン屋のブランディング
「パン以上、ケーキ未満。」という店名は、同店が掲げるキャッチフレーズでもあり、店舗のコンセプトだ。この一言で、他店にはない独自の価値を明確に伝えている。それを視覚的に伝える役割を果たしているのが、同店の商圏内に設置された複数の野立て看板である。
グランドオープン時に100名以上の行列ができたという事実は、この看板が「最初の接触点」として新規顧客に強いインパクトを与えたことを示している。
野立て看板は、地域の風景に溶け込みながらも、日々の通勤や買い物の道すがらに潜在顧客の視界に入り、徐々に「行ってみようかな」という興味を育んでいく存在である。広告媒体を越えた集客装置であり、ブランディングツールである。同店は、野立て看板のそのような特色を最大限に活用するため、看板に「無添加生地」「北海道十勝産小麦100%」といった品質を強調するメッセージを記載し、健康志向の消費者に響く訴求力が生みだした。実際同店のリピーターは、健康志向の女性が多い。このような一貫性のあるブランディングを、看板広告というアナログメディアで成し遂げているところがユニークである。
複数設置の集客効果と戦略的配置
「パン以上、ケーキ未満。」の野立て看板は、先に述べたとおり、戦略的に配置されたブランディングメディアとしての機能を果たしている。看板は、店舗近隣だけでなく主要な道路沿いにも設置され、この配置により店舗へのアクセスの容易さを直感的に伝えている。これにより、「行きやすさ」という心理的ハードルを下げ、初めて訪れる顧客に対しても積極的な来店を促している。
さらに、複数の看板を商圏内に設置することで、潜在顧客との「接触頻度」が増加し、「知っているお店」という意識が自然と形成される。
この「頻度と接触点の増加」は、心理学的にも購買行動に影響を与える重要な要素であり、実際の来店行動を促進する効果が期待できる。看板が目に入るたびに、「あのパン屋に行ってみようかな」という好奇心が積み重なり、最終的に足を運ぶという行動に結びつくのだ。
ブランドメッセージと地域内ブランディング
「パン以上、ケーキ未満。」というキャッチフレーズは、このベーカリーの価値提案を簡潔に表現している。パンとケーキの間に位置する「特別な存在」であることを強調し、他にはない魅力を感じさせ、消費者に「ここだけの体験」を提供している。このメッセージは、看板に明確に表示されており、地域住民にとって日常の中で「特別なパン屋」としての位置づけを確立している。
また、ビジュアルの一貫性も重要である。野立て看板には店舗のロゴや統一感のある配色が用いられており、これにより看板を目にした顧客が実際に店舗を訪れた際に「どこかで見たことがある」という安心感を得ることができる。この視覚的アイデンティティの確立が、消費者との信頼関係を築く上で非常に効果的に機能している。
さらに同店は、野立て看板を中心に、チラシやSNS、DMといった他のプロモーション施策とも連動させることで、広告媒体間での相乗効果を生み出している。
野立て看板が「認知の起点」として機能し、他のメディアが補完的な情報提供やキャンペーンの告知を行うことで、顧客の購買行動へと繋げている。看板は単独での効果に留まらず、他の広告媒体と連携することでその効果をさらに高める重要な役割を果たしているのである。
野立て看板の多面的な価値
「パン以上、ケーキ未満」にとって、野立て看板はただの広告ではない。それは地域社会の中でブランドを根付かせ、新規顧客を呼び込み、既存顧客との関係を深めるための「多面的な価値」を持つツールである。看板が果たす役割は、「目立つ広告」に留まらず、次の2つの重要な機能を果たしている。
1. 集客効果の最大化
商圏内に複数設置し、潜在顧客との最初の接触点として機能することで、実際の来店行動を促進する。
2. ブランディングの基盤構築
ブランドメッセージを一貫して発信し、地域密着型の認知を高めることで、短期的な集客だけでなく、長期的なファン形成にも寄与する。
「パン以上、ケーキ未満。」は、その名の通り、パンとケーキの間にある特別な価値を地域に届け続けている。そして、その価値を効果的に伝える手段として、野立て看板はこれからも大きな役割を果たしていく。