コラム
Column
感覚を共有する看板広告:地域に愛されるブランドの作り方
感情に訴える広告の力
広告において、どれだけ情報を伝えるかも重要ですが、それ以上に大切なのは、見る人に何を「感じさせる」かという点です。
例えば、キンキンに冷えたビールを一気にのどに流し込んだとき、心の中からほとばしる言葉が何か、想像してみてください。多くの人は思わず「クゥ~」「プハーッ」といった感嘆詞を口にするでしょう。これは、ただの言葉ではなく、体験そのものが生み出す感情の表現です。そして、そんな感情を広告に取り入れることで、ブランドは人々の心に深く刻まれます。
つまり、その商品やサービスを体験することでどのような感情が生まれるのかを考え、それをどのように表現するか。この視点を持つことで、ブランドは「感情に根ざした記憶」として人々の心に残ることができます。
テネンツ・ラガーの感情と感覚に訴える広告
スコットランドのビールブランド『Tennent’s Lager(テネンツ・ラガー)』は、まさにその「感情に訴えかける」広告手法を採用しています。
創業300年以上の歴史を持ち、スコットランドでも非常に人気のあるビールブランドであるテネンツ・ラガーは、特に屋外広告(野立て看板)に力を入れています。今年、同ブランドが展開した新たな看板広告には、一風変わったデザインが施されていました。
看板に描かれているのは、白いビールの泡と黄金色の液体。そこに「Oooft!」という感嘆詞が大きく配置されています。商品の説明やキャッチコピーは一切ありません。ただ「Oooft!」という文字だけが、大きくビジュアルに重なっているだけ。
「Oooft!」は、日本語で言うならば「プハーッ」に近い感嘆詞。つまりこの広告は、ビールを飲んだときの爽快感を感嘆詞だけで表現し、見る者にテネンツ・ビールの美味しさを感じさせる広告になっているのです。情報を伝えるのではなく、感情を共有することでブランドの魅力を伝えています。
また、そのデザインが持つ「感覚的な引力」によって、消費者に強烈な印象を与えます。「Oooft!」という感嘆詞は、視覚的な要素と結びついて、見る人の中に「このビールを飲んだときの感覚」を鮮烈にイメージさせるのです。このような視覚と感覚を結びつけた広告手法は、受け手の記憶に残りやすく、ブランドに対する愛着や共感を育むのに効果的です。
参考サイト:https://www.adsoftheworld.com/campaigns/oooft
感覚を共有する広告の効果
感覚を共有する広告には、人の感情に直接働きかける力があります。日本で「プハーッ」と声をあげるのと同様に、スコットランドの人々が「Oooft!」とうめく瞬間。この感覚的なリアクションが、見る者に共感を与え、「ああ、自分もこんな体験をしたい」と思わせるのです。
広告が感覚的な反応を引き出すことは、消費者との間に感情的なつながりを生み出します。ブランドと消費者との間に「共感」という絆を生むことになるわけです。その絆こそが、消費者の購買意欲を促進し、ブランドロイヤルティを高めるための重要な要素なのです。
感覚を共有する広告手法は、特に競争の激しい市場において、他のブランドとの差別化を図るために大きな効果を発揮します。
野立て看板の地域密着型効果
野立て看板の大きな特徴は、地域密着型であることです。特定のエリアで繰り返し目にすることで、消費者の潜在意識にブランドの存在を深く刻み込みます。
その効果を高めるのが感情に訴えかけるデザインです。テネンツ・ラガーのような感覚に訴えかける広告は、ブランドと消費者の間に「体験」を共有する場を作り上げます。それは、ブランドの「体験」を消費者と分かち合うためのツールになるということです。
地域で事業を営む事業者にとって、このブランディング戦略は非常に有効です。例えば、飲食店や医院など、日常生活に密接に関わるサービスを提供している場合、その地域での認知度がそのまま集客に直結します。何度も目にする看板広告は、消費者に親近感を生み出し、「ここなら信頼できるかも」「一度行ってみよう」という感情を引き出します。
コストパフォーマンスの高さ
また、野立て看板の利点はそのコストパフォーマンスの高さにもあります。特に、広告予算が限られている事業者にとって、大規模なメディア広告は負担が大きいですが、看板広告ならば比較的低コストで長期間にわたって効果を発揮します。
看板広告は、一度設置すればその場所に長期間存在し続けるため、持続的に消費者の目に触れる機会を提供します。これは、広告効果が時間と共に積み重なり、ブランド認知度の向上に寄与するという点で非常に優れた広告手法です。
また、設置場所を工夫することで、特定のターゲット層に効率的にアプローチすることが可能となります。例えば、学校やオフィスの近くに設置することで、特定のライフスタイルを持つ消費者に直接アプローチすることができます。
効果的な野立て看板の導入方法
では、実際に野立て看板を導入する際、どのようにすれば効果的でしょうか?
まず、地域の特性をよく理解し、その地域に住む人々がどのような感情に共感するのかを考えることが重要です。テネンツ・ラガーの例では、ビールを飲んだときの「爽快感」を共有することで、共感を生み出しました。あなたのビジネスでも、顧客が商品やサービスを利用することで得られる感情、例えば「安心感」「楽しさ」「満足感」などを看板デザインに反映させることで、広告を見る人々の心を動かすことができるでしょう。
デザインそのものも非常に重要です。文字数を減らし、シンプルで視覚的に訴えかける要素を強調することで、通りがかった人々に強い印象を与えます。また、感情に訴えるキャッチコピーを使用することで、商品の特徴を説明するのではなく、感じさせることを目指しましょう。そうすることで、看板広告はブランド体験の一部となり得るのです。
看板の設置場所の選定も非常に重要です。ターゲットとする消費者層が日常的に通る場所や、長時間滞在する可能性の高い場所に設置することで、看板の効果を最大限に引き出すことができます。
こうした取り組みにより、野立て看板は単なる広告媒体ではなく、ブランドと地域社会との結びつきを強化する重要な役割を果たすことができます。消費者との深い関係を築き、地域に根ざしたブランドを育て上げるために、野立て看板を積極的に活用してみてはいかがでしょうか。