コラム

Column

コラム
  • コラム:「人の数だけ旅に出る動機がある」British Airwaysの前代未聞な広告キャンペーン

コラム:「人の数だけ旅に出る動機がある」British Airwaysの前代未聞な広告キャンペーン

「人の数だけ旅に出る動機がある」
British Airwaysの前代未聞な広告キャンペーン
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

人の心は、恋にも似た旅への未知なる憧れによって動かされる。

私たちは、四方八方に広がる広大な「世界」という名の本を開かずにはいられない。

旅の動機というものが、それぞれの心に根ざした個性であることを、英国の老舗航空会社「British Airways」は、その広告キャンペーンを通じて、500のさまざまな理由を示して私たちに問いかける。 

「どうして人は旅に出るのだろうか」と。
一見すると、ビジネスのため、レジャーや観光のためなど大雑把なカテゴリーで立ち止まってしまいがちだ。
しかし、真実はもっと微妙で多様性に富んでいる。

農場で収穫された瞬間のトマトの味を求めて旅に出ようとする人がいる。なんとも詩的ではないか。 

「履いている靴の中に砂が入り込む」という経験から、「履いている靴になんの砂も入らない日常」という現実の空虚さを実感し、新たな地を踏みしめることの喜びを知る者もいる。

では、オリーブの実の大きさだとか、古代彫刻家たちの名前を口実に世界を旅すると言ったら?

奇妙に思われるかもしれないが、これもまた旅の一端を照らし出す。British Airwaysはこれらの様々な動機を、「人の数だけ旅の楽しみはある」というコンセプトの下、屋外広告、野立て看板、ポスターなどで世に問いかけた。

シンプルな白い背景に、力強いコピーとロゴマーク。
これだけで心を動かせるのだから、広告の力は計り知れない。
どこを歩いても、どの商業施設に入っても、どの雑誌を開いても、常に違う「旅の動機」がそこにはある。
これは、消費者の心理に巧みに訴えかけ、旅への欲求を掻き立てる戦略である。

500種類の動機を広告にする。前代未聞のキャンペーン。

一人ひとりの内面にある「夢」や「探求心」を反映させたコピーは、時として私たちが抱える日常の疑問や欲望に火をつける。
街角に現れるその広告は、私たち自身の内なる世界を映し出す鏡のようにも思える。
旅の真の楽しみを知るためには、自分だけの理由を見つけることが何より重要だ。
そんなことを消費者に語り掛ける。

世界は広く、旅は多種多様である。私たち一人ひとりの旅の動機を超えて、旅そのものが持つ普遍的な価値をBritish Airwaysのキャンペーンは教えてくれる。
そして囁きかける。

「British Airwaysで旅に出よう」と。巧妙な広告キャンペーンである。

■500種類の広告。実際の看板写真はこちら

https://www.dandad.org/awards/professional/2023/237629/a-british-original/