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ニカラグアで見つけた「意味が分かるとクスッと笑える」野立て看板

2025年2月21日

タイトル画像 ニカラグアで見つけた「意味が分かるとクスッと笑える」野立て看板


南米・ニカラグア。街を車で走っていると、突如として目に飛び込む看板。壁の前や駐車場に並ぶバイクたちのうち、なぜか一台だけがとても快適そうに佇む――そんなデザインの野立て看板だ。

木から落ちた大きな枝に潰されるバイク、犬にマーキングされるバイク、鳥の糞まみれになったバイク、そして炎天下にさらされるバイク――いずれもガソリン車。ところが、その隣で「SUPER SOCO」と呼ばれる電動バイクだけは、木陰の下で涼しげに、あるいは何も汚されることなくスッと立っている。対比の意味がわかると思わず「クスッ」と笑ってしまう野立て看板である。

これらのユーモアあふれるシーンが描かれた野立て看板には、共通してひとつのキャッチコピーが記されている。

“When you care for nature, it cares for you in return.”

(自然を大切にすれば、自然もあなたを大切にしてくれる) 

私たちはしばしば環境問題について耳にするたび、「排ガスを減らしましょう」「地球温暖化が…」と、やや説教くさく堅いメッセージをイメージする。だが、このキャンペーンが打ち出すのはむしろ、自然と仲良くできると人生がもっと楽しくなるよ、というポジティブで軽妙な世界観だ。木が枝を落としてガソリンバイクを“攻撃”し、犬がガソリンの匂いを嫌がってマーキングし、鳥が汚い乗り物には糞を落とし、木陰を与えるかどうかも自然が選んでいる。まるで自然が意思を持ち、排ガスを撒き散らすバイクを嫌う一方、クリーンな電動バイクを歓迎しているように見えるのだ。

■参考サイト:https://www.adsoftheworld.com/campaigns/respect-nature-and-it-will-take-care-of-you-7bf7457a-03a5-4209-9bb8-0c683500c327


環境を味方につけるユーモアの力

イメージ画像 草原沿いの道路に駐車された一台のバイク


この広告を出しているのはオーストラリアのオートバイメーカー、Vmoto Group社。その電動バイクブランド「SUPER SOCO」は、低価格かつ高品質を目指しながら、環境に優しい移動手段として注目を集めている。しかも今回、あえて南米のニカラグアで野立て看板を展開したのが興味深い。南米といえば、バイクが日常の足として広く普及している地域。ガソリンバイクが圧倒的に多いからこそ、ここで「電動バイクは自然と共存できる」というメッセージがより際立つのだろう。

ただ、“自然にやさしいですよ”と普通に書かれているだけでは、受け手の心は動きにくい。そこで用いられたのが「ユーモア」という仕掛けだ。木や犬、鳥、日陰といった身近な存在を引き合いに出し、それらがガソリンバイクを敬遠し、電動バイクを優遇する様子を描くことで、笑いと共に「自然から好かれる生き方ってなんだろう?」と見る者に考えさせる。通常、環境広告は深刻になりがちだが、こうしたコミカルな演出により、“軽やかに環境保護を考えよう”という姿勢を打ち出しているのだ。


四枚の看板が織りなす“小劇場”

イメージ画像 2台並んで倒れて置かれた赤と青のおもちゃのミニチュアバイク


具体的に、看板にどんなシーンが描かれているのか。たとえば最初の看板には、大きな枝が落ちてガソリンバイクを覆ってしまっている絵がある。隣には何事もなかったかのように凛と佇むSUPER SOCO。木がまるで「お前は自然を汚すから罰を与える」と言わんばかりの光景だ。気の毒だけれど笑ってしまう。

二枚目の看板では、犬がガソリンバイクのそばでマーキングをしている。嗅いでみて「ここは俺の縄張りだ」と主張しているのか、それとも排ガスの匂いが嫌なのか。いずれにせよ、同じ場所にあるSUPER SOCOには見向きもせず、電動バイクは無傷。

三枚目は大量の鳥が電線に留まる姿。下にはガソリンバイクがずらり並び、フンだらけの悲惨な状態だが、少し離れた場所に停まるSUPER SOCOだけは汚れがない。そのカオスな構図に「鳥たちが環境を汚すものに制裁を下している」なんて想像が膨らみ、つい笑みがこぼれる。

そして四枚目は、炎天下の駐車場でガソリンバイクが日差しにあえぐ中、電動バイクは木陰の特等席を与えられている。ここでも自然が選んでいるのは“クリーンな乗り物”だというわけだ。どれも単純な対比だが、そのシンプルさゆえに一瞬で意味が伝わり、ストーリーを頭の中で完結できる。まるで動く映像を見たかのような鮮やかさがある。


“When you care for nature…”の奥行き

イメージ画像 地球のイメージから木の芽が芽吹いている様子


これらのビジュアルを補完する言葉が、例のキャッチコピー“When you care for nature, it cares for you in return.”である。直訳すれば「自然をいたわれば、自然もあなたをいたわってくれる」。なんとも美しいフレーズだが、広告としては非常に強力でもある。なぜなら、この一行があるだけで、「自然=意思を持つ存在」という設定が一気に腑に落ちるからだ。木がわざと枝を落とす、犬がマーキングする、鳥が落とし物をする、木陰を選んでくれる――すべてが「自然の恩返し」または「逆襲」なのだとユーモアたっぷりに語られる。

さらに、SUPER SOCOの電動バイクが「自然に配慮した移動手段」であることも、このコピーによって暗に示される。だから自然が見方につくのだ、と。普通なら難しい理屈を並べて「CO2排出量が何%削減…」などと説明したくなるところを、たった一行に凝縮できるのは見事だ。


野立て看板の強み:瞬間で心をつかむデザイン

イメージ画像 バイクの写真と貸出中の野立て看板


写真を眺めればわかるとおり、このキャンペーンの看板は広々とした背景にシンプルな文字を添えるだけ。視線のフォーカスは、ガソリンバイクの悲惨な状況と、それを横目で見つめるかのように無傷で立つ電動バイクだ。膨大な情報を並べるよりも、“絵と一言”で勝負するシンプルさが、野立て看板のセオリーを押さえている。

野立て看板は高速道路や幹線道路沿いで一瞬しか目に留まらない場合が多いため、いかに瞬時にメッセージを伝えられるかがカギだ。そこで「ユーモア×わかりやすい対比」を前面に出し、背景を極力シンプルにすることで、走行中の人でも瞬発的に理解できる。実際に車で通り過ぎる際、「あれ、なんか木がバイクを潰してる!なんで?」と一瞬で引き込まれ、そのままコピーを目で追って「ああ、そういうことか」と腑に落ちる流れが想像できる。しかも、笑いが伴うので記憶に残りやすい。


自然を守る選択が、私たちの心を弾ませる理由

イメージ画像 地球のイラストに寄り添う一台のバイク


冒頭から述べてきたように、“環境配慮”は通常、どこか堅苦しく考えられがちなテーマだ。しかしこのキャンペーンは「環境に優しくすると、こんなに楽しいんだよ?」というポジティブなビジョンを見せてくれる。ガソリンバイクが被害に遭う様子はあくまでコメディであり、そこから漂うメッセージは「こうならないために電動バイクを!」と煽るものではなく、「電動バイクに乗ると自然から歓迎される、ちょっと得した気分になれる」という穏やかな誘いなのである。

近年、世界的にSDGsやエコロジーが叫ばれる中、私たちは環境問題を“義務”や“罪悪感の軽減”として捉えがちだが、この広告はそれを“喜びやユーモア”に変換している。日常の風景がちょっとしたアニメのように動き出し、木や犬や鳥が意志を持って行動する――そんなファンタジーめいた光景を背景に「環境に優しい選択をするのも悪くないな」と思わせる。ユーモアが、責任感という重荷を拭い去り、「やってみたい」「乗りたい」という新鮮な気持ちを呼び起こすのだ。