コラム
Column
オールドムービーファンをターゲットにしたルノーの野立て看板とは?
2024年11月14日
サンフランシスコの街を猛スピードで駆け抜ける車。急カーブをドリフトするたびにタイヤが悲鳴ををあげ煙を吐き出す。小刻みなジャンプを繰り返しながら急な坂道を、ジェットコースターのように失踪する。
スティーブ・マックイーン主演の映画「ブリット」のクライマックスシーンです。
1968年製作のこの映画は、古い映画ファンには人気のある作品。特に、スティーブ・マックイーン演じる刑事と犯人のカーチェイスシーンは、実際のサンフランシスコの街中で撮影され、映画史上に残るカーチェイスとして名前を刻んでいます。
そんなオールドムービーファンの心を震わせるカーチェイスシーンを、フランスの自動車メーカー「ルノー」は、ミニチュアカーと実際の街を模したジオラマ模型を使って再現しました。
クラシックカーでノスタルジーを与える
使用するミニチュアカーは、往年の名車「ルノー・5」(初代1972-1985年)、「ルノー・12」(1969年-1980年)、「ルノー・4」(1961–1992年)の3車種。名作映画のシチュエーションにルノーのクラシックカーを登場させることで、映画と車のオールドファンの双方の琴線に触れるジオラマが生まれました。
そしてこのジオラマが3種類のビジュアルになり野立て看板として、パリのシャンゼリゼ通りに掲出されました。
そこにはこんなコピーが一言。
「do try this at home(自宅でやってみて)」
昔の映画のシーンを再現した凝ったジオラマ。躍動感あふれるカースタント。そこに登場する主役の車は「ルノー」のクラシックな名車たち。そんなビジュアル広告、古き映画ファンと古きクラシックカーファンをターゲットにしています。さらに掲出場所がシャンゼリゼ通り。富裕層のオールドファンに向けたプロモーションです。
ルノーの野立て看板戦略とは?
さてそのようなオールドファンに向けてルノーは一体何を売ろうとしているのか?
答えは、「ルノーのオンラインショップで販売されるミニカー」です。
ミニチュアカーといえば子どものおもちゃというイメージ。それをあえてシニア世代のノスタルジーグッズとして出しています。実際にルノーのオンラインショップは、「子どもこころよ永遠なれ」というコンセプトを打ち出し、ノスタルジー満載なものになっています。
ここで見逃せないのが、ミニチュアカーでシニア世代のノスタルジーを刺激しながら、それが自然な形で「ルノー」という自動車メーカーのブランディング――「好感度」の醸成に繋がっているところです。さらにもうひとつ。富裕層のオールドファンをターゲットにしているところがポイント。
オンラインショップでミニチュアを購入した顧客に、ルノーの旗艦店、シャンゼリゼ通りにあるアトリエ・ルノーへの来店を誘う仕掛けが用意されていました。アトリエ・ルノーにはミニカーを撮影できるジオラマが設置されており、購入したミニカーをそこで撮影できるようになっています。さらに、プロモーションとして、ジオラマを走るミニチュアカーのアニメも制作し、同店で公開されたのです。
来店した顧客は、ミニチュアカーで思う存分遊び、さらに店舗ショールームに展示されている最新のルノー本体を体験できるという趣向。
なかなかひねったプロモーションです。ミニチュアカーから本物のルノーの車への販売に繋げるという仕掛けが、ユニーク。お金を持ったシニア世代をターゲットにした、野立て看板を触媒にしたプロモーション事例、あなたなら自身のビジネスにどう応用しますか?