コラム
Column
交通量にとらわれない、ターゲット消費者にピンポイントで訴求する野立て看板戦略とは?
2024年11月5日
三重県鈴鹿市の農機具を専門に扱うリサイクルショップ「農機具王 三重店」の野立て看板をご紹介します。
同店の看板設置場所は、通常の野立て看板設置場所のセオリーとは異なる場所になっています。一般的に、野立て看板は交通量の多い道路沿いを選んで設置することが多い。それは、交通量が多いと「看板を視認する消費者が多い」ことにつながるからです。看板の情報を記憶に残す消費者を増やすためには、交通量の多い場所に看板を設置するのが有利だと一般的には考えられています。
しかし、三重県鈴鹿市のリサイクルショップ「農機具王」は、そのセオリーとは異なる場所に看板を設置しました。同店は、店名からも分かるとおり、農家にとって欠かせない農機具のリサイクル品を扱っています。農業にはさまざまな農機具が使われます。トラクター、コンバイン、田植機、耕運機、草刈り機、運搬車など、農家にとってどれも必要不可欠です。そしてそのような農機具は非常に高価なもの。
また、近年ではどの地方でも、後継者問題などで廃業する農家が増えています。廃業する農家には、大型・小型のさまざまな農機具が眠っています。それ以外にも、古くなった農機具を買い替える農家も少なくありません。買い替えで不要になった農機具は、農家の倉庫でほこりをかぶることになります。「農機具王」は、廃業する農家や倉庫で眠っている農機具を買い取り、メンテナンスを施したうえでリサイクル商品として販売しています。新品と遜色ない製品を、新品よりも格安で購入でき、同時に不要になった農機具を高値で売ることもできるため、農家にとっては価値の高い店舗です。
つまり、同店の顧客は、売る側も買う側も「農家」ということになります。
通行人の顧客ターゲット率100%の道路
顧客ターゲットが明確であればあるほど、広告の発信は限定できます。野立て看板で言えば、顧客ターゲットが多く通行する道路に設置すれば、広告効果はより高くなります。同店の顧客ターゲットは、「100%農家」です。つまり、看板はセオリー通りに交通量の多い幹線道路上に設置しなくても、農家の通る道路に設置すれば広告効果は高まるということです。
「農機具王」は、「カントリーエレベーター」に向かう道路なら、ターゲットである農家に向けて訴求できると考えました。カントリーエレベーターは、地域の農協が運営する農作物の物流倉庫です。その地域の農家は、自分の田畑で採れた作物を必ずここに持ち込み、保管してもらいます。農協支部の管轄内の農家は、誰もがここを訪れます。つまり、「カントリーエレベーターに至る道路を使用するのはほとんどが農家の人」ということです。
一般的な野立て看板のセオリーとは真逆の考え方で、交通量の多さで設置場所を考えるのではなく、「交通の質」、つまりターゲット層の数で設置場所を考えるという発想の転換です。
想像してみてください。自社の取り扱う商品やサービスを必要とするターゲット顧客が、ほぼ100%通る道路があるとすれば、その道路沿いに設置する野立て看板は、どのような媒体で展開する広告よりも大きな成果を期待できる広告になります。カントリーエレベーターに向かう道路は、農機具専門の店舗という特殊なリサイクルショップにとって、理想的な立地条件となります。
顧客ターゲットに確実に情報を届けるには?
広告効果を考えるとき、一般的には「露出の多さが効果につながる」という考え方をします。それは間違ってはいません。テレビコマーシャルに高い広告効果が認められるのは、テレビという電波メディアで何百万もの消費者に一斉に情報を発信するからです。その何百万もの消費者の中の「ほんの一部のターゲット層」に情報が届けば良いのです。情報を受け取る消費者の母数が多いからこそ効果が出るのです。
同様に、交通量の多い幹線道路上に野立て看板を設置するのも、情報を受け取る消費者であるドライバーの母数が多ければ、それだけターゲット層に届く確率が高くなるからです。だからこそ、通常は交通量の多い場所を選んで看板を設置するのが一般的となります。
しかし、この事例のようにターゲットとする消費者が明確であり、その消費者の行動が予測できるのであれば、たとえ交通量が少なくても農家というターゲット層が確実に通る道路に看板を設置すれば、これほど効率よく訴求できる広告はありません。
極端に言えば、「明確なターゲット」があり、「ターゲットの行動が予測」でき、「ターゲットに訴求する情報内容」であれば、交通量の多寡はまったく問題になりません。むしろ、交通量がほとんどないからこそ効果が出る野立て看板になるのです。
ターゲット消費者の行動パターンに寄り添う野立て看板戦略
今回の事例から得られる示唆は、ターゲット顧客が誰であるかを明確にし、その行動パターンに合わせた広告戦略を取ることの重要性です。一般的な広告のセオリーに縛られず、ターゲットとする消費者の行動予測に基づき看板の設置場所を決定する。そうすることにより、消費者にとって意味のあるメッセージを届けることが可能となり、広告効果を最大化することができるわけです。
つまり、単なる交通量を重視するのではなく、ターゲット消費者の「質」に焦点を当てた野立て看板広告の成功例として、地域の小規模事業主にとって(業種・業態を問わず)大きな示唆を与えているはずです。ターゲットが確実に目にする看板こそが、最大の広告効果を発揮する、という意味において。
ターゲットの行動特性を深く理解し、それに基づいた戦略を立てること。それにより広告は単なる情報発信ではなく、ターゲットの消費行動を促す強いメッセージとなります。あなたのビジネスにおいても、この成功事例を参考に、よりターゲットに寄り添った広告戦略を展開してみてください。