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コラム 2024/02/22号 ケチャップで赤く染まる、イタリアの青い空:アメリカのケチャップメーカーがイタリアで仕掛けた挑発的な野立て看板広告キャンペーン
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ケチャップで赤く染まる、イタリアの青い空:
アメリカのケチャップメーカーがイタリアで仕掛けた挑発的な野立て看板広告キャンペーン
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イタリア。その名は、夏の夕焼けのように熱く、チェロの音色のように情熱的。
母なる地中海から吹く風には、古代ローマの英雄たちの荒々しい叫びが今もこだまする。
そんな地で長い年月をかけて磨き上げられたのが、パスタの文化。
まるでアルマヴィーヴァ伯爵が愛したスカパレッリのドレスのように、多様な形、色、味わいを持つパスタ。
それは単なる食べ物ではなく、イタリアの魂そのもの、食の芸術。
しかしここに、「挑発のアメリカン」、ケチャップメーカーのハインツが現れました。
赤白緑の国旗のもと「トマトケチャップパスタソース」なる発明品で、ドラムロールを鳴り響かせ、イタリアの地で挑発的な広告キャンペーンを打って出るのです。
まるで、市民にこんなことを問いかけるかのように。
「アモーレ、今宵はケチャップで乾杯?」
広告ビジュアルは、撮影されたハインツのケチャップソースで作ったパスタ料理の2種類の写真。
一方には「食の神への捧げ物」のような美しさ、この写真には「ばかばかしいほどおいしいハインツ」のコピー。
他方には「味覚の悪魔への奉納」のような異形、この写真には「ばかばかしいほど間違っている?」のコピー。
この2種類の対照的なビジュアル広告を並列でレイアウトして、野立て看板にしました。
そしてこの看板は、イタリアの街を猛烈な論争の喧騒へと誘うことになったのです。
この街角に設置された看板で、ソーシャルメディアでは大論戦。
「これはパスタの冒涜だ!」とハインツのケチャップソースを非難する伝統派の声と、「イノヴァツィオーネ(革新)!」と呼応し、ハインツの冒険を喜ぶ新風派の声。
しかし、ハインツもイタリア人もトマト愛は真剣勝負。
言ってしまえば、この対立もまた、トマトをいかに美味しく食べるかという永遠のテーマから発生した副産物だったのです。
挑発的なキャンペーンは大成功。
SNSは日々火花を散らし、ハインツは「シェフの白衣を着た楽園の蛇」として人々の記憶に刻まれました。
だが、ちょっと待って。
もしかすると、この異端児の登場で、イタリア人はパスタというキャンバスにまた新たな色彩を加えたのでは?
結局の所、イタリアの青い空は赤く染まっても青。
変わることなき美しさを放ち続けます。
そして、次にどんな風味の「画期的な一皿」が出現するのか、それこそがイタリアの、いや、人類の食文化が進化し続ける証。
さぁ、今日、どちらのパスタを食べましょうか?
カンパーニャな夕暮れの、トマト畑を彷彿とさせるソースのトマトパスタ?
それともテヴェレ川のせせらぎを連想させるクラシックなペペロンチーノ?
これぞ人生、これぞパスタ。
■実際の看板写真はこちら
https://www.adsoftheworld.com/campaigns/ridiculously-wrong-or-ridiculously-good